● アフィリエイトサイトの視点も取り上げられたシンポジューム
昨年の11月14日に第一回のシンポジュームを開いて約4ヶ月ぶりの、2002年3月5日、リンクシェアでは第二回目のシンポジュームを開催した。場所は、同じく三井物産本館の12階大会議室。シンポジュームの中味も変わったが、会議室自体も150人から200人は入ると思われる大きな部屋に、一人一人の席に液晶モニターが取り付けられ(稼働は3月11日からとのことだった)、以前と変わって壮観だった。
第一回目のシンポジュームは、どちらかといえば、ECサイト(広告主)に重点を置いた運営になっていたが、第二回目はアフィリエイトサイドからの声が大きく取り上げられる機会が持たれた。
リンクシェアのシンポジュームの趣旨が、既にメンバーになっているECサイトと有力アフィリエイトに対する啓蒙と教育の場であると同時に、或いはそれ以上に重点を置いているのが両者の交流であり、両者の理解をface to face で深めて、いわばお見合いをして結婚の仲立ちをする場を提供することであった。
アフィリエイトプログラムにおいては、この「結婚」なくしては、その存在自体無意味になるわけだが、顔の見えないオンライン上から、顔の見えるオフラインに視点を移して直接情報交換の場を作ろうという試みは、それも、有力ECサイトと有力アフィリエイトをすべて一堂に会する機会を作るという試みは、正直、三井物産ーリンクシェアでなければ出来ないと感じた。
● シンポジュームの進行スケジュール
シンポジュームの内容を概観するにはスケジュールを示すのが一番良いので、そのスケジュールをお見せする。
1.リンクシェアチームのオープニングレクチャー。
「アフィリエイトサイトとの提携効果を高めるには」
2.アフィリエイトプログラム運営事例紹介。
デルコンピュータ(株)及び、セシール(株)の二社による事例紹介。
3.ECサイト、アフィリエイトサイト、各3者によるパネルディスカッション。
このうちの、リンクシェアの「オープニングレクチャー」は、特に興味深かったので、取り上げられた主題を列挙して、参考に供したいと思う。
「アフィリエイトサイトの提携効果を高めるには」と題して示されたのは、次の7つのステップを踏むことによって、それが達成されるというものであった。
・ステップ1 アフィリエイト側の動機を理解する
・ステップ2 ECサイト側の販売ノウハウを伝授する
・ステップ3 売上上位アフィリエイトの動向を研究する
・ステップ4 アフィリエイトをセグメント別に管理する
・ステップ5 消費者向けプロモーションツールを提供する
・ステップ6 アフィリエイト向けプロモーションを実施する
・ステップ7 実績データを検証して分析する
それぞれが非常に有効な興味ある主題であり、まさにその通りである、と言えるような内容であった。分かりやすく話されたので、理解できたとは思うが、出来れば40分という時間に圧縮されるような内容ではなく、もう少し、時間を割いて話された方が参加者の理解が深まっただろうし、これだけでセミナーができあがる内容だった。率直に言って、参加者のアフィリエイトプログラムに対する理解度が、このレクチャーを理解できるまでに高められたかと、感心した内容だった。
このレクチャーの細部をご紹介するスペースはないが、たとえば、ステップ6の「アフィリエイト向けプロモーションを実施する」では、次のように述べられている。参加されなかった皆さんの参考にもなるので引用させて頂く。
● 「アフィリエイト向け、プロモーションを実施する」
・アフィリエイト向けプロモーションの実施は、アフィリエイト側のやる気を高めるのに有効です。
・アフィリエイト向けプロモーションの効果を上げるには、対象アフィリエイトを絞り込み、目的を明確にする必要があります。
・売上上位アフィリエイト側からは、常に同業他社と比較されていることを忘れてはなりません。アフィリエイトに積極的に売ってもらうには適切なインセンティーブが必要になります。
・新規ECサイトのプロモーション例
・期間限定で、報酬料率を上げる
・始めての売上に対して定額のボーナスを提供する
・特定期間内にトップページにリンクを掲載したアフィリエイトを対象に、抽選でボーナス報酬を提供する
・一定期間内に一定の成果を出したアフィリエイトに対して、その後、優遇報酬レートを保証する
・既存ECサイトのプロモーション例
・売上上位アフィリエイトに対して、CoBrandの専用ランディングページを提供する
・売上上位アフィリエイトに対して、競合他社のリンクを排除すべく、特別優遇レートを提示する
・一定期間内に成約率がアップしたアフィリエイトに対して報酬料率をあげる
・一定期間内に販売額がアップしたアフィリエイトに対して報酬料率をあげる
・停滞アフィリエイトを対象に、初めての売上に対して定額のボーナスを提供する
● ECサイトのアフィリエイトプログラム運営事例
スケジュールの項で述べたように、デルとセシールが行ったが、それぞれに会社内容の紹介から始まった。デルは一般の人にはなじみが無く、セシールは男性にはなじみが無いというところから、会社の内容が説明され、次いで、各社のアフィリエイトプログラムへの取り組みが説明された。
個別の会社の内容は公開がはばかられるところもあると思うので、セシールが説明したコンテンツのみを掲載しておく。セシールの場合は特に、ECサイトであると同時にアフィリエイトでもあるので、その取り組み方が特に参考になったと思う。
・セシールのインターネット事業概要
・セシールのアフィリエイトへの取り組み
No.1 弊社サイト「Cecile On Network」の掲載コンセプト
No.2 「LinkShare」プログラム加盟の目的
No.3 弊社アフィリエイト運用手段
No.4 弊社アフィリエイト促進策
これらについて資料を使い説明されたが、これからアフィリエイトプログラムに参加しようという方、参加されたが運用に迷われている方に非常に参考になったと思う。
この運用事例に限らないが、シンポジューム全体を通して感じられたのは、繰り返しになるが、ECサイト、アフィリエイトサイト共に、アフィリエイトプログラムに対する理解度が驚くほど増したと言うことであった。これは、説明者がシンポジュームで事例説明するという責任を負われたからだけではないと思うが、日本のアフィリエイトプログラムにその「発生以前」から何となく関係させてもらってきた筆者にとっては、時代の移りを感じさせるものであった。
● パネルディスカッション
パネルディスカッションは、ECサイト、アフィリエイトサイトそれぞれ三者が出て行われた。
ECサイト側:
・e87.com
・エディー・バウアー・ジャパン
・日販 Boople.com
アフィリエイトサイト側:
・価格.com
・スターツ出版
・セシール
ディスカッションは次の問題について行われた。
1.アフィリエイトマーケティングに期待するもの
2.提携サイトに求めるものは?
3.あなたにとって効果がある、やる気のあるオファーとは?
時間の制約もあり(45分間)、ディスカッションというよりは、それぞれが希望、現状を述べたという印象が強かったが、「再訪問日数」についてはディスカッションらしい場面が見られた。これは、Return days とも呼ばれ、サイトにアクセスしたビジターが、その次にそのサイトを訪れるまでの日数をいうのである。
● アフィリエイトプログラムで重要な「再訪問日数」の設定とライフタイムコミッション
「再訪問日数」について1週間だ、10日だというような話しが出たが、これは、単に例だったとは思うが、海外のサイトにアクセスする機会の多い筆者の経験例を述べておこう。アメリカのECサイトは ”短くて”も30日、45日で、これ以下の数字にはめったにお目にかかったことがない。普通は50?90日というのが多い。
アフィリエイトプログラムにおいては、これもアメリカの統計だが、90?95%が、第一回目のアクセスではものを買わないと言う。勿論、商品の性質にもよるので、本などと言う目的のはっきりしているものはそうでもないだろうが、一般のショッピングにおいては人間は徹底的に迷い、わがままだた言うことを知っておく必要がある。
長いサイトをあげて参考に供しよう:
・ USA Today 及び、NewYork Times Home Deliveryともに365日。
(アメリカでは著名新聞の本体までがアフィリエイトプログラムに参加している。日本で、著名新聞の本体ーー書籍・雑誌部門などでなくーーが参加するのは何時の日か・・・)
・Match.com 1827日
(アメリカで最大、非常に著名な出会いサイト。なんでこの数字が出たかは知らないが、とにかく一度ビジターを送り込んだら、その権利は半永久的に続くと言うことである。徹底してアフィリエイトを優遇しており、傘下の One and Onlyと共に、アフィリエイトプログラムで成功を収めた優等生的サイト)
30日以下に設定する一般的なショッピングサイトがあったとしたら、アフィリエイトプログラムに参加しても無駄だと思った方がよい(特殊な登録サイトなどを除く)。それで売上が上がらないとしたら戦略の間違いである。
それから、これからのECサイトに研究して頂きたいのは、ライフタイムコミッションの設定である。ライフタイムコミッションについては2月27日の「業界動向ニュース」にも書いているのでそちらを参考にして頂きたいが、特に毎月支払いが発生するようなホスティングサービスや、接続サービスなどは割合にたやすく設定出来る。アメリカではこのサービスが急速に広がりつつある。日本ではASPの対応がまだそこまで行ってないとの話しもあるが・・・
「再訪問日数」を ”正しく設定”することと、ライフタイムコミッションの設定を考えることはアフィリエイトプログラムを最大限に活用しようと言う企業にとっては大事な研究課題のひとつである。
このパネルディスカッションの最後に質疑応答の予定があったのだが、時間の関係でそれがカットされてしまったのは残念だった。
● 異色な「懇親会」
二時間半のセミナーが終わった後、午後6時から地下1階のカフェテリアで懇親会が開かれた。第一回目は首からプラスチックの名刺入れを下げて、それに名詞をいれて自己掲示をしたが、恐らく、さらに研究した結果だと思うが、今回は、参加者全員にB5を半分に切った程度の大きな用紙に参加者の名前を大きく書き、ご丁寧にもそれぞれの企業イメージ・カラーで印刷し、2枚ずつ配布した。
参加者はそれを両腕に巻いたり背中に貼ったりして、一目瞭然、どこから見ても、どこの企業かはっきりと分かるようにしたのは、主催者の、ECサイトとアフィリエイトに、結びつきのチャンスを最大限与えようと言う意気込みが切実に感じられた。いいお年をしたマネージャークラスのおじさんが、ワッペンを背中に貼って人々の間をとびまわっているさまなど、このお見合い風景はユーモアにも溢れていたし圧巻だった。
主催者のスタッフが、お見合いの仲立ちのために一生懸命紹介の労をとうとしていたのは、参加者に非常に好感を持って迎えられたに違いない。
先回の学習効果を随所に生かして二回目のシンポジュームは終わったが、感想を一言で述べろと言われたら、「壮大な」試みであったということだろう。そして、時代は間違いなく進んでいるということで、アメリカの三泊四日の「船上でのアフィリエイトマーケティングサミット」とまでは行かないにしても、それに近い集まりが近いうちに出来そうな予感を与えてくれただけでも、成功であった。参加者はこれだけの集まりを主催したリンクシェアに対して、ローヤリティーを高めたに違いない。
そういえば、上記の「船上アフィリエイトマーケティングサミット」が、世界の著名なアフィリエイトプログラム関係者を集めて、フロリダで3月15日にオープンする。こちらは、業界の垣根を取り払っての、世界規模の集まりである。
このエントリーのトラックバックURL
http://www.affiliateportal.net/mt/mt-tb.cgi/190