アメリカの東北部(ボストンのあたりから北の方)と云えば、知る人ぞ知る、ロブスター(伊勢エビ)の名産地である。筆者も貿易業務に携わっていた現役の頃、ボストンに出張した折りに、そのバカ安値に驚いて、日本では殆ど食べられない腹いせに、毎日ロブスターを食べにレストランに通った記憶が生々しい。
このロブスターを生きたまま発送するのを売り物にしているダイレクトセールスの会社がLobster Gram社である。ロブスターのダイレクトセールスとしてはアメリカNo.1と云われている。
1987年、創立者のDan Zawacki氏が、このアイディアを銀行に持ち込んだら、「生きたロブスターを送るなんて気違い沙汰」と、一蹴されて、仕方なく、自分のクレジットカードを使って会社を立ち上げたとのことである。
対象が生きたロブスター、食べ物だということで、厚生省などお役所のいろいろな規約をクリアしなければならず、軌道に乗るまでは大変であったらしい。まさにニッチマーケットに参入し、最大規模のビジネスを築き上げ、且つ、アフィリエイトパートナーに「非常に魅力あるマーチャント」と、云われるまでに成長したのである。
ロブスター・グラムは、2001年11月に、コミッションジャンクションをASPとして、アフィリエイトマーケティングに参入した。4000の登録サイトを獲得するまでにはさして時間がかからなかった。
4000の登録サイトを得たと云うことはプログラムとしては成功と云えるだろう。しかし、社長のZawacki氏は、アフィリエイトの年間セールスが1万ドル、約120万円を越えたサイトがなく、且つ、実際に彼の製品を積極的にプロモートしているのは、登録サイトの10%にも満たないというのを知ったときに、喜んでばかりはいられないと思ったのである。
「もっともっと売ってくれるアフィリエイトを探す必要がある」と感じたのは良いが、では、どうやって? となるとはたと困惑してしまったのである。オフラインのビジネスでパートナーを探す術は幾らでも知っていたが、インターネット上で最高のアフィリエイトパートナーをどうやって探すのか?
そこで、2002年8月、アフィリエイトマーケティング関連のコンサルタントに依頼して、オンラインのビジネス戦略を構築し且つ最良のパートナーを探す為の「チーム」を編成したのである。
まず、アフィリエイトプログラムの現状を分析したところ、次のことが分かった。
・Zawacki氏が思っていたように、大きくコミッションを稼ぐいわゆるスーパーアフィリエイトが存在しない。そして、このようなスーパーアフィリエイトをコミッションジャンクションを仲立ちとして、ただ、座して待っていたのでは、獲得することは難しいのではないか?
・アフィリエイトの皆さんが公平にそこそこの数字を挙げるというのは、プログラムの上からは、”フェア”に見えるが、決して大きな飛躍は期待できない。スーパーアフィリエイトの存在無くして、サイトのページビューが伸びないし、また、ページビューがお粗末では、スーパーアフィリエイトは獲得できない、という、ジレンマに遭遇したのである。
●そこで、チームは、スーパーアフィリエイトを獲得するための5つのステップからなる戦略を練り上げたのである。
◆ステップ1: ターゲットとするアフィリエイトパートナーを特定する
次の3つのグループからトップクラスのパートナーサイトが見つかるに違いないことを知ったのである。
1.検索サイト、ショッピングのポータルサイト、クーポンサイト
2.できの良い”パパママ”ショップサイト、但し、オンラインモールを構築するために、また大きなトラフィックを構築するためのSEOをマスターしていること。
3.高いパフォーマンスをもつ、トピックや、製品関連のニッチなアフィリエイトサイト
3つすべてをチェックした結果、最終的には、最初の2つに焦点を絞ることにした。これはコンサルティング会社の持ついままでの経験と知識、そして検索エンジンを通してより容易に確認出来るところから来たのである。
◆ステップ2:ターゲットの見込みパートナーに対して特別のオファーを計画する
トップクラスのアフィリエイトは普通、何かインセンティーブ無しには、新しいマーチャントのオファーには乗ってこないことが知られている。そこでチームは、見込みのあるパートナー候補には、彼らが乗りやすいような特別なオファーを個別に用意したのである。
まず、第一に、特別なオファーをする前に、製品のマージン、コミッション、そしてアフィリエイトプログラムをマネージする事によって生じるコストやASPに関して発生するコストなど、すべてを見直してみた。
内部で発生するすべてのコストを計算に含めることによって、特別なオファーをする余地があるかないかなど、チェックすることができたのである。多くのマーチャントはアフィリエイトに支払うコミッションや、ネットワークを維持するコストに注意を向けるが、アフィリエイトプログラムを運営しているそのこと自体のコストを忘れがちである。
こうすることによって、見込みパートナーに行うインセンティーブのオファーに2つの柱となる要素を取り出したのである。
1.コミッションボーナスの額 ーー チームは、通常支払われる販売額の10%のコミッションの上乗せとして、2?10%の間でポイントを設定した。これは、アフィリエイトパートナーの目標額達成度によって、支払われるものである。
2.アフィリエイトパートナーが、彼らの顧客に対して行うことの出来る、「カスタマープロモーション」の設定。これは、普通のアフィリエイトプログラムの流れの中では出来ない、特別なオファーである。
上記の(1)は、いわゆるボリュームギャランティーによるオファーであり、これは、アフィリエイトパートナーの現行のトラフィックから推定して見積もることが出来る。
上記の(2)は、例えば、発送費用である。これをマーチャント負担にすれば、顧客サービスになり、アフィリエイトパートナーは注文が取りやすくなる。或いは、2万円以上の注文に対しては10%のディスカウントをするといったオファーである。
このような、特別のオファーを、但し、これこれの額以上の売上を達成してもらいたいといった条件をつけて、いくつかの見込みアフィリエイトパートナーにオファーしたのである。
◆ステップ3:見込みパートナーに対する一対一の個別アプローチ
述べてきたようなインセンティーブのオファーを持って、チームは見込みパートナーに個別のアプローチを実施したのである。数にして10サイトばかりである。最初はemailによるオファー、そして、1日か2日おいて、電話によるアプローチを試みた。
これらのトップクラスの見込みパートナーに対しては、彼らの質問に対してしっかりして回答を用意しておくことが必要である。「なぜ、我々はこのマーチャントのパートナーとして、仕事をしなければならないのか?」 このような問いに対しては、ロブスターグラムの信用性をしっかりと説明し、アフィリエイトとしての長期のビジネスパートナーになって、両者の関係を構築することから生じる利益を納得させることにしたのである。
そして、ロブスターのサンプルを見込みパートナーに送ることにより、製品の品質と生きたまま送るという、発送能力を納得してもらったのである。
上記のオファーそれ自身は、コミッションによるインセンティーブと、ある特定顧客に対するサービスの組み合わせである。これらのオファーを4つか5つのサイトに対してのみ行うのである。一旦見込み客が、これは面白い仕事だということで真剣になってきたら、チームはプロモーションのフォーマットを彼らに送るのである。(多くの見込みパートナーは、自身で、マーチャントのサイトにアクセスして、適当なバナー広告などを探し出し、それをタイムリーに自身のサイトに持ってきてリンクを張ることに面倒くささを感じるものである)
プロモーションのフォーマットには、次のような説明をつけた。
「あなたのサイトに適したバナーをお送りします。あなたは120X60のバナーをお使いになっているようなので、4本の120X60のバナーをお送りします。この中から最適のものをお選びになって下さい。コミッションジャンクションからのリンクは張られていて、あなたのコードナンバーも埋められております。あなたは特に何もすることはありませんから、ただ、あなたのサイトにお貼り下さい」
◆ステップ4: フォローアップと再チェック
これらの材料一式を送ったら、少なくとも3日後には、チームは、各サイトに対して電話で、これらがきちんとリンクされたかどうかをフォローアップするのである。
こうして、今度は、インセンティーブとプロモーションが作動しているかどうかを見守るのである。もし、パートナーが、コミットした数量に達しなければ、プロモーションは更に延期される。もし、パートナーが余りよく、動いていないようならば、チームは代替え案を出して、パートナーと一緒にやってみるのである。
このような過程を通して、アフィリエイトに対する顧客のリアクションを知り、時には、そのアフィリエイトの持つ、顧客の嗜好などを知ることになる。こうしてアフィリエイトパートナーとの個人的な関係をより深めることが、絶対的に必要なのである。
◆ステップ5: 結果を測定する
チームは、新たに加わったアフィリエイトパートナーの平均的なEPC (affiliate earnings per clickーアフィリエイトのクリックごとのもうけ) と販売の上昇の具合をチェックする。翻って、アフィリエイトは、いままで見いだせなかった新しい可能性を発見することになるのである。
新しいパートナーのコンバーションレートは、通常の2倍以上であり、新しいパートナーサイトは、「ショッピング志向」の顧客をロブスターグラムに持ち込んだのである。
アフィリエイトといっても、それには大きな差異がある。貼られたバナーから入ってきて、何となく「検索する」カスタマーしか送り込めないアフィリエイト、これの繰り返しでしかないアフィリエイト、これが従来の一般的なアフィリエイトなのである。これに対して、送り込んできたカスタマーが、「たった一つの行為ーー購買という行為」しかしないカスタマーを送り込むアフィリエイト、新しく設定したパートナーはこの種のアフィリエイトなのである。
このようなプロセスを加速することにより、トラフィックはあるけれども売上が上がらない、といった現存のアフィリエイトの業績をモニターし、意気が上がらないアフィリエイトに対する対策を立てていくことも出来る。どうしてもダメなところは関係を絶つと行ったことも行う必要がある。
2002年12月、計画を実行してから4ヶ月目、アクティーブアフィリエイトの実数は2%落ち込んだが、アフィリエイトベースの売上は38%上昇したのである。
結果として、アフィリエイトプログラムを通しての売上は、全体の売上の4%であった。2003年度は、この二倍にあたる8%の売上を見込んでいる。
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